大人の心の学習法(15)

守⇒破の進み方

守破離の成長過程で、特に守から破に移る段階について、数回にわたり解説してきました。

種の守りすぎは、教条主義になってしまいます。早すぎる破は、結局自己流で中程度の成長でとどまってしまいます。

では、理想的な守⇒破の進み方はどのようなものなのでしょう。

あるスキルを知ったら、まず素直にやってみる。必ずそのスキルの長所があるというスタンスで、現場で何度か確かめてみる。ただし、そのスキルを妄信しない。現場でうまくいかないところは、しっかり見据えておく。ある程度自分の感覚に自信を持てたら、そのスキルを離れて他のスキルを試してみる。この繰り返しが一番成長するのではないかと思っています。

ポイントは2つあります。

一つは、一つだけのスキル練習にこだわらないこと。

よく一つのスキルだけを極めたほうが技量が上がると思われがちですが、実験でも結構いろんなスキルを試してみたほうが、結局技量の向上につながるようです。スポーツ選手も、一つの競技だけでなくいろんな競技をやることの効果が注目されています。おそらくバランス感覚が磨かれていくのでしょう。

もう一つは、必ず現場で試しながらスキルを磨くことです。現場から離れたスキルは、ただ「教え、教えられる場」だけの飾り物のスキルになってしまいます。

山登りに例えてみましょう。

図の緑とオレンジがスキル上達の道だとします。剣術の北辰一刀流、示現流のようなものです。どちらのルートでも最終的に大きな山に登れます。

それぞれの入り口で、オレンジルートの一般方向⇒と、緑ルートの大きな方向レクチャーしてくれます。オレンジルートで頂上まで登った人は、素晴らしいですが、オレンジの視界しかありません。これが、それぞれの知識の守に当たる部分です。守を教えてくれる講師は、そこしか教える必要がないので、そればかりを信じてしまいます。教えることばかりで現場を忘れてしまうと、結局オレンジルートの直上の小さな山しか登れません。

早すぎる破の人は、灰色の進み方です。早い段階で自己流の山に登っていきます。せっかく緑やオレンジの先輩が築いたルートがあるのに、もったいないことです。

さて、本当に上手に山を登る人は、赤線のように進みます。まずは、入門として、緑ルートの説明を受け、緑ルートを登り始めます。しかし、緑ルートが物足りなくなったら、オレンジルートを試してみます。破です。それも物足りなくなったら、山の後ろの青ルート、そしてまた緑ルート…と、いろんなルートを試しながら、頂上に向かうのです。

重要なのは、それぞれのルートの解説を聞いても、必ず山という現場で試しながら進んでいくということ。

実は、一見全く違うルートでも、結局は同じ山に登っているということが多いのです。だって、人間の本質はそれほど変わらないからです。赤のルートを通った人は、頂上に着いたら、オレンジルートエキスパートの言っていることも、緑ルートの達人のいうことも全部理解できます。

そうなった時が、これまで、山登りに際していろいろ言われていたコツ(守破の知識)のすべてにこだわりを持たなくなる状態になります。それこそが「離」の領域です。