感情の海の中で、思考が果たす役割(2)

感情に翻弄されてしまったとき、思考は無力です。潮の流れにほとんど逆らえません。

しかし、潮の流れを読める人は、対策がとれます。読むためには、その海の特性を知ることです。心の特性について知ること。これが感情の海の中で思考の果たす一つ目の役割です。

二つ目の役割は、気付くこと、しばらく流されてみることです。

自分が「流されている」と気付かないことには、対策が取れません。流されていれば気付くでしょう!と思っていたら大間違い。感情の潮はある方向にぐんぐん流れていくので、漫然としていると、同じ方向を見て目前の問題ばかりに対処しているうちに、現在地点と方向を見失うのです。

気付かないと、これまで通り、必死に舵を取り、オールを漕ぐというパターンに終始しがちです。思考は、問題→修正のパターンで考察します。この公式を逆算すると、今うまくいかないということは、問題があるということ。ここで問題とは、自分の考え方や感じ方が悪いのではないか、努力や我慢が足りないからではないか、という自分に原因を求める思考、つまり自己否定思考につながりやすい。

海の例で言うと、潮の流れがあるかもしれないが、もっと自分がオールを漕げばいいのではないか、うまく舵を切っていけばいいのではないかという、自分に原因を求め、ダメ出しする思考。

感情に翻弄された人は、気付くまでは、問題解決思考で努力し続けて、それで成果が出ないので、自信を失い、疲れ果ててしまっています。

実は、感情のケアでお伝えしているのですが、人は自信を失い、疲れてくると感情が強く発動し始めるのです。つまり、感情の海の潮が強力になってしまっています。

気付いて、問題解決パターンを一度止めてみる。それで感情の潮目が少し治まってくるのです。

森田療法の「あるがまま」は、この状態。流されていることに気がついたら、目先の努力をやめて、少しだけ潮に流されてみる。感ケアではこれを「触れる」と呼んでいます。自分の感情を否定せず、その言い分を聞くのです。すると自己否定が小さくなり、疲労が取れます。そのうちに潮目を冷静に観察できるようになります。それだけで、好循環が始まっていくのです。

好循環が始まった後の思考の役割は、次のメールで。