患者数に振り回されるな

コロナウイルスの不安が広がっている。特に、患者数が増え、それが速報で流されるたび、心がちょっとギュッとなる。

私たちは数字に影響されやすい。特に1000以下の数字は、原始人的に敵・味方の数、動物(獲物)の数、木の実の数など、生に直結するので、我々はその増減をとても敏感に感じるようになっている。

患者数が8増えた…という知らせは、自分の周りに危険がひたひたと近づいているイメージとなり、不安が刺激される。

感情は、原始時代の危険な環境にいち早く対応するため、仮想現実を作り、過剰に反応するシステムだ。この仮想現実は、ある刺激をボリュームアップし、クローズアップし、ワープして結論のイメージを作る。つまり数字という一つの情報から、かなり極端なイメージが出来上がりやすい。

これらのメカニズムの概要は、「感情のケアプログラム」で解説しているが、講座ではもう一つ大事なことを説明している。

それは、感情は小さなリスクを探し出しそこへ注目させるが、結果として「大切なものへの注意がおろそかになる危険がある」ということ。

コロナウイルスのことを本当に冷静に考え、シミュレーシすれば、今私たちが注目すべき数字は、刺激的な「患者数」ではなく、一般人にはあまり注目されない「経済指標」のほうではなかろうか。現在の小さなリスクを過剰に恐れ、各人の行動が緊縮していくと、今後の10年の日本の未来を薄暗いものにしていきかねないのだ。

不安の特性として、「数字に影響されやすい」以外にも「不安情報の量を正しさと勘違いする」や「不安は危険情報を探し出しそれを拡散したがる」や「権威の発言は不安拡大の好物になる」…などがあるが、簡単な対策とともに、南日本新聞の「論説」に解説した。2月24日の掲載予定。