原因や経緯について想像しすぎないこと

 三浦春馬さんがお亡くなりになった。誠実でとても明るい印象の方だったので、「まさか彼が」とショックを受けている人も多いだろう。30歳という若さもつらい。

ネットでもいろんな記事や感想を見かけるが、自殺予防の分野で長く活動してきた者として、一言だけ伝えておきたい。

 それは、原因や経緯について想像しすぎないこと。

 私は縁あってこれまで400件以上の自殺を振り返る体験をしてきたが、死にたい気持ちが生じたり強くなったりするのに、外からの刺激が観察されない場合がかなり多い。うつという状態になると、「死にたい」という気持ちが生じやすくなり、出来事にかかわらず、それが大きくなったり小さくなったりする。未遂した本人も、「死にたいときは、別に理由がなかった」と語ることが少なくない。

 人は、知人の自殺に遭遇すると、どうしてもその経緯や原因を知りたくなり、断片情報をつなぎ合わせて、「これが自殺の原因だ」と納得したがる。原因がわかると、少し安心するからだ。

 ところが、この原因探しの時に自分の経験というデータを使うので、「きっと、これが苦しかったに違いない、だって自分もそれで苦しんでいる」という偏った思考をしやすい。マスコミなどの記事もその視点で選び、理解してしまう。ネットを見るたび、その思いが強くなる。こうなると、(彼と同じ状況で苦しんでいる)自分も死を選ぶのではないか、死ぬしかないのではないか、と感じやすくなるのだ。

 ただ、原因探しをするなと言っても、してしまうだろう。そんな時は親しい人と話をすること。自分一人では、偏った方向に進みがちな思考も、信頼できる人との会話なら幾分客観的になりやすい。親しい人といることで孤独もまぎれる。直接会えなければ、メールやSNSでもいい、つらいときは寄り添って乗り越えよう。とりあえず1か月頑張ろう。必ず時間とともに緩んでくる。