ゴールデンファイルを抱えてこける

高校時代、新聞部の友人がみんなの前でこけた。こけ方がおかしかったのでみんなで笑ったのだが、彼は立ち上がると「これだけは守った」と誇らしげにカメラを見せた。ちょっときざっぽくて、みんな、今度は冷笑した。

うつっぽい人が、普通だったら避けるような出来事にあえて臨み、結果的に調子を崩してしまうことがある。周囲から見たら、なぜ避けなかった?と疑問なのだが、本人は何か自分の大切なものを守ったような気がしている。あの新聞部の友人のように。

人は周囲には分からなくても何か大切な価値観を持っている。私たちはそれをゴールデンファイルと呼んでいる。どんなゴールデンファイルを持っているかは、案外自分では気がついていないことが多い。自分にとってはあまりにも当たり前なことだからだ。

しかし、何らかのトラブルに対して不自然な対応をし、ダウンしてしまった時は、起き上がる時に自分の腕の中を覗いてみるといい。そこにあるのがゴールデンファイルだ。本当に身を呈してしてまでも守るべきものなのかどうか、自分自身を振り返る、またとないチャンスになる。