そらす、の技術

 感ケアの入門講座では、下げる、触れる、再考するの3つのスキル群で解説していますが、実は「そらす」という技術も大切なスキルグループです。

そらすは、2段階で使用します。

 3段階の感情の嵐にある時は、何とか必死に下げます。「下げる」とある程度日常を送れるのですが、そこで忘れてしまっていると、「くすぶる」に発展しがちなので、あるタイミングで「触れる」を行い、体験をきちんと整理します。そしてできるだけ無害な記憶にして(再考する)心の棚にしまうのです。

 そらすは、触れるタイミングを待つまでの間、感情からある程度の距離を保つためのスキルです。

 ちょうど、はやりのマインドフルネスなどがこれに当たりますが、一般的には、仕事やスポーツなどをして嫌なことを忘れる、という人が多いと思います。

 例えば、仕事なら、一人でやる事務仕事なら、そらす効果が高いでしょう。ところが、人が絡む調整などは、どうしてもすでにうっすらと疲労していることが多いので、「思うように動いてくれない」「どうして私がこれをやるの?」などとネガティブな思考がわきやすくなります。また、スポーツは、やりすぎて疲労をためるというデメリットもあります。

 どのスキルも、メリット・デメリットがあります。これが正しいというものはなく、自分にとって、メリットが高く、デメリットの小さいもの、また、コスパが良く手軽に行えるものを模索するのです。

 ある指導者の方は、いろんな書体の龍という文字をきれいなデザインをした布に墨で一字ずつ書く作業をしてみました。嫌なことがあっても、小一時間、墨の匂いを嗅ぎながら、一つ一つに集中して書く。だんだん出来上がる達成感。何より、龍のイメージが自分にピッタリ。嫌なことから、しっかり距離をとれてとても落ち着けたそうです。すばらしい「そらす」スキルになっていますね。

 正解のスキルなどありません。自分のスキルは、自分で探し当てるのです。