感情が暴れるときはまずは勢いを緩める

 感情のコントロールは、ピストル型の散水ノズル付きホースで庭の草花に水をやるのに似ている。要素は3つ。ピストルの引き金での放水ON, OFF、方向性、水の勢い。

 たとえば、イライラ。

 何にイラっとするかは、ピストルの引き金。これは価値観(ゴールデンファイル)のことだ。例えば、「客(自分)は丁寧に扱われるべき」という価値観を持っていれば、コンビニの店員の態度が悪いとき、怒りが発動する。 

 方向性というのは、怒りの場合、自分が攻撃されているという思い込みと、相手を攻撃するのが正しいという思い込み。怒りの思考は、反省より他者への攻撃の方向に向く。

 最後の水勢いは、感情の大きさ、衝動の強さ。方向に向かってどれぐらいの力が生じるかということ。

 通常、つまり理性的に判断できるとき(感情の表・裏の第1段階)は、感情の勢いもそれほど強くないので、理性によって勢いを抑え込めるし、方向性も制御できる。そんな時は、どんな状態で引き金を引くか、つまり自分の怒りについての価値観を緩めることが、感情のコントロールのメイン部分になる。水やりに例えると、通常の水圧ならば、手元のピストル部分で水を止め、これと決めた植物に、思い通りの量で水やりができる。その時は、どの植物に水をやるかだけを考えればいい。

 ところが、例えば疲労が混んで第2段階になると、感情の勢いが2倍、3倍になる。2倍、3倍のイメージは、水やりの場合なら、水の勢いが強すぎて、手元で水を止めていた散水ノズルも吹っ飛び、蛇口が暴れてしまっている状態。

 こんな状態になった時は、散水ノズルをつけなおそうとしたり、暴れるホースを捕まえようとする前に、まずは、大元の蛇口を止めなければならない。

 怒りの感情がコントロールできない人に、「怒るべきことじゃない」とか「怒りをぶつけるのではなく、アサーションだ」などといっても、あまり効果がない。とにかく暴れる感情から距離をとり、まずは感情の勢いを止めること。感ケア5でいうと、刺激から時間と距離をとり、疲労を回復させ、感情の勢いを減らしていく作業をする。

 価値観の整理、アサーションなどのツールは確かに効果がある。しかし、それらを過信してはいけない。すべてのツールの効果は、状況によって、変化するものであることを理解しておこう。