カウンセリングの上達は、勉強ではなくスポーツの上達と同じ

私がカウンセリングを教えるとき、強調しているのがこのことである。

カウンセリングを学ぼうとする人が陥りやすいのが「本を読んでカウンセリングを勉強しようとする」こと。入り口としては問題ない。英語だって数学だって本で勉強した。勉強して試験に受かり、目標を達成した。

カウンセリングもこれまでの勉強と同じように、「心理学」や「精神医学」というジャンルを頑張って勉強すれば、大学や院で学べば、資格を取れば(試験に受かれば)、一流になれると誤解している人が多い。

確かにそのように「知りさえすれば実行は簡単」というジャンルもある。受験はほとんどがこれだ。ただ同じ受験でも、英語の聞き取りは少々違う。センスやトレーニングが必要だ。知っていることとそれができることには大きな差があるというジャンルもあるのだ。

例えば、野球のプロを選ぶドラフトやトライアウトでは、おそらく筆記試験はないだろう。実技のみが評価される。野球のルールや歴史に詳しいからと言って、プロにはなれない。

では、カウンセリングは、どちらだろう。カウンセリングはコミュニケーションである。いわゆる実技なのだ。いくら理屈を学んでも、それだけでコミュニケーションがうまくいくわけではない。やはりトレーニング、試行錯誤が必要な分野だ。

もちろん、カウンセリング心理学の研究や講師を目指すなら、勉強だけでも問題はない。医師にも研究者と臨床がいるのと同じだ。

ただもしあなたが、本当に人を助けるためにカウンセリングの実力をつけたいなら、心理学や精神医学の本や講座の世界に閉じ籠っていてはいけない。かなりのトレーニングが必要だ。人生は短い。きちんと現場スキルを鍛えてくれる師や仲間を探して、しっかり練習し本当の実力を積み上げていきたいものだ。