大人の心の学習法(13)

初級のスキルにとらわれすぎていないか

 

前回もお話ししましたが、守には、基本のスキルと初級のスキルがあります。

かつて私が中学で野球をやっていた時、厳しく言われたのが、ボールを取るときは、両手でとること。グローブをつけている左手だけでとると、監督から烈火のごとく怒られました。

でも、実際プロ野球を見ていると、ほぼ片手だけで取っている。

「両手で取る」は、まだ子供で、運動機能の発達も練習量も十分でない人が気を付けるべきコツです。グローブで取り損ねても、逆の手でフォローするための初級のスキル。

いろんな球技で言われる「ボールをよく見る」も、真実のようですが、実は初級のスキル。プロのテニスプレーヤーなどは、必ずしも最後までボールを見ていません。

このように、初期のころに教わったスキルは、いつまでも守らなければならない「基本」と誤解される恐れがあります。

しかも、はじめての人には、やや極端に教えることがあります。ミスをすると、すべて「ボールを見ていない」のせいになってしまう。実際の試合などでは、ボールだけでなく、相手の動きを見ることとも多いのですが、とにかく初めのうちは、ボールを見ることだけが何度も何度も強調されます。すると、だんだんそれが「本質」「真実」レベルのことだと勘違いするのです。

 

あなたも、自分の感情について、「感情は抑えるべき」「不安を見つめるとどんどん不安になるので、嫌な想像は、何かで気を紛らわせて考えないほうが良い」「怒りは、表現すると自分に返ってくる。我慢して」「弱い自分を簡単に見せてはだめ」などのいろんな対処法を持っていると思います。一見真実のようですが、実は幼いころに教えられ、これまで疑ってこなかった初級のスキルかもしれません。

 

基本スキルではないので、大人になった今は、かなりアレンジしなければならないのに、これまでのスキルにこだわっていませんか。感情のケアプログラムでは、初級のスキルではなく、基本から応用(破)までのスキルを順番に練習していきます。頑張り屋さんだけど、もろいという「子供の心」ではなく、柔軟にしぶとく生きる「大人の心」に必要なスキルを磨いていきましょう。